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舟山 知夫; 横田 裕一郎; 鈴木 芳代; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
JAEA-Review 2014-050, JAEA Takasaki Annual Report 2013, P. 73, 2015/03
原子力機構・マイクロビーム細胞照射研究グループでは、集束式重イオンマイクロビームを用いた、従来のコリメーション式重イオンマイクロビームを用いた照射より高速でかつ正確な細胞照準照射技術の開発を進めている。これまでに集束式重イオンマイクロビームを用いた細胞の照準照射のための要素技術の開発を行ってきた。そこで、2013年度は、これまでに確立したそれらの要素技術を用いて、実際の細胞への高速で正確な照準照射技術の確立を目指す実験を実施した。実験では、ヒト子宮頸がん細胞由来細胞株HeLaを用い、顕微鏡下で細胞試料へのスキャンビームを用いた照準照射を行った。その結果、CR-39上で検出したイオンヒット位置と、細胞核内に検出された H2AXフォーカスの位置が一致したことから、細胞への高速な照準照射を実現することができたことが確かめられた。
舟山 知夫; 横田 裕一郎; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 小林 泰彦
no journal, ,
マイクロビーム細胞照射研究グループは、重イオンマイクロビーム生物照射システムの開発と、それを用いた細胞一つ一つに正確に制御したイオンを照射する技術の確立を進めてきた。これまで、サイクロトロンの重イオンビームを四連四重極磁気レンズで集束したビームスポットを顕微鏡下で正確に検出し、スポット位置に細胞を電動ステージで移動することで細胞照準を行ってきたが、この手法を用いる限り、細胞照射のスループットの向上には機械的な限界が伴う。そこで、集束ビームをビームスキャナで高速走査することで、細胞一つ一つに正確かつ高速に重イオンを照射する技術の確立を試みた。CR-39フィルム上に播種したHeLa細胞を生体蛍光染色し、その蛍光画像における位置情報を画像解析で抽出、得られた座標値を元にビームスキャナへの印加電圧を算出し、これを用いて試料への高速走査照射を行った。高速走査照射を行った細胞位置と、CR-39上に可視化したエッチピット位置が合致したこと、および当該細胞へのH2AXのフォーカス生成が確認できたことから、照準した細胞への正確な照射を集束ビームの高速走査技術を用いて行うことが可能となったことが確認できた。
池田 裕子; 横田 裕一郎; 舟山 知夫; 金井 達明*; 中野 隆史*; 小林 泰彦
no journal, ,
本研究では、ヒト胎児肺由来の正常線維芽細胞株WI-38と、ヒト肺がん細胞H1299/wtを用いた。炭素線ブロードビーム照射(LET=108keV/m)した細胞と非照射細胞を非接触で共培養した後、コロニー形成実験を行い、非照射細胞の生存率を測定した。炭素線0.13Gy照射したWI-38と非照射H1299/wtを共培養すると、非照射がん細胞の相対的な生存率が、共培養開始から6時間および24時間後に約15%20%増加した。0.5Gy照射したWI-38を用いた場合では、非照射がん細胞の相対的な生存率が約10%15%低下することが分かった。また、Carboxy-PTIOを添加した培養液を用いた場合には、共培養開始から6時間および24時間後に、0.5Gy照射群において、非照射がん細胞の相対的な生存率が増加傾向を示した。この結果から、異細胞種間バイスタンダー効果では非照射細胞の生存率低下に、一酸化窒素ラジカルの媒介が関与する可能性が高いが、その一方で相対的な生存率を増加させるシグナルの関与も示唆された。
舟山 知夫; 横田 裕一郎; 坂下 哲哉; 鈴木 芳代; 池田 裕子; 小林 泰彦
no journal, ,
原子力機構高崎量子応用研究所では、重イオンの生物照射効果を解析するために、コリメーション式および集束式の2つの重イオンマイクロビームシステムを開発・運用してきた。コリメーション式重イオンマイクロビームシステムでは、これまでに培養細胞のみならず、線虫やカイコ、メダカなどの生物個体も含めた多様な生物試料への照準照射を実施し、その重イオン照射効果の測定や、バイスタンダー効果の機構解析、さらには、マイクロビームをラジオサージェリーツールとして用いた個体における発生学・生理学的な解析実験を実施してきた。一方の、集束式重イオンマイクロビームシステムは、コリメーション式重イオンマイクロビームでは実現が難しい高精度かつ高速な照準照射を実現するために開発された。これまでに、このシステムを用いてスキャンビームを用いたヒト培養細胞への高速照準照射技術を開発した。
村田 和俊*; 野田 真永*; 尾池 貴洋*; 高橋 昭久*; 吉田 由香里*; 鈴木 義行*; 大野 達也*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 高橋 健夫*; et al.
no journal, ,
本研究では、Rho情報伝達経路を介したヒト肺がん細胞A549株の細胞遊走能に炭素イオン照射が及ぼす影響を明らかにすることを研究の目的とした。細胞遊走能の定量はwound-healingアッセイを、細胞表面突起の形成の評価はFアクチン染色を用いた。細胞生存率はWST-1アッセイを用いて定量し、MLC2タンパク質の発現量および同タンパクセリン19残基のリン酸化量の定量にはウエスタンハイブリダイゼーション法を用いた。炭素イオン照射したA549細胞における照射効果をこれらの方法で解析した結果、炭素イオン照射が、A549細胞の遊走能をRho情報伝達経路を介して増加させる一方で、Rho結合キナーゼ阻害剤によりその照射効果が抑制されることが明らかになった。